現在施工中の施主様は骨董商を営んでおられます。
ある日、『これ使えないかな?』と見せていただいたのが写真の瓦でした。
重森三玲さんの作庭で有名な京都・東福寺の軒先瓦です。
東福寺改修工事の際に寄進者に配られたものだそうです。
施主様の現場でもスギゴケを貼る場所があり、そこに埋め込んでみようかな?
『スギゴケ+東福寺の古瓦=ウケる!!』・・・みたいな感じですね。
数日経ち、いよいよ植栽工事前の打ち合わせ時、施主様は瓦とは別に手水鉢をご用意されていました。玄関へのアプローチ脇にその手水鉢を置き、 簡略化した蹲を添景してみようという趣旨でした。
こじんまりとした、本当につくばう(しゃがむ)という動作が必要なほどの感じのいい手水鉢です。
蹲のイメージが固まり、施主様もご納得された後、私はふと東福寺の瓦を思い出し、
『瓦はどこに埋め込みましょうか?』とお聞きしたところ施主様は、
『それはもういいです。私は珍しさや、東福寺というブランドを取り入れるより“作法”の方が大切だと思います。』とおっしゃいました。
あきらかに私は失敗しました(笑)
施主様から出たコトバは私が施主様に伝えなければならないコトバでした。
デザインするということは、安易に『ウケる』物を取り入れることではなく、その空間に何が必要で、何が不必要か考え抜かなければいけません。
これは庭という限られた空間の中でも、洋の東西を問わず同じことです。
デザインとは形や見た目を整えることだけではありません。
私たちの生活の中には、必ず『作法』があるのですから。
引き継がれるべき『作法』をデザインすることも必要です。
あらためて、気を引き締めてデザインに取り組まねば・・・と感じた出来事でした。
こんな私ですが・・・(笑)
エクステリアやお庭のご相談がございましたら、お声掛けください。
http://www.flower-children.org/
コメントをお書きください